現世。

こんばんわ。hanakoです。

　お天気が続いて

　花屋さんも忙しくなってきました。

　この季節に来店する顔馴染みのお客様にも

　お会いする事が出来ています。

　みなさんお元気そうで何よりです。

　いつもお友達と2人でいらっしゃるご婦人。

　今日は1人で来店でした。

　　バスケットを作って下さい。

　あれ？　珍しいな。

　しかもかなり高額の品。

　今日はお一人ですか？

　　そうなの。

　　いつも一緒に来ていたひとね

　　亡くなったのよ。

　　つい最近。

　とても仲が良い2人でした。

　この季節にはシクラメンを買いに来てくれた。

　　今年も楽しみにしていたのよ。

　　今日　ここへ来る約束もしていたの。

　心不全。

　予期せぬあっという間の事だったらしい。

　　そのバスケットね

　　彼女に持っていってあげようと思って。

　49日も過ぎていないがリクエストで

　お友達の好きな赤いシクラメンを入れた。

　1つ1つお友達の好きだった花を

　思いを込めながらバスケットに詰めてゆく。

　　お花が大好きでね

　　庭にはいろいろな花が咲いているのよ。

　　育てるひとが居なくなっちゃったなぁ。

　花が咲き誇る庭に主だけがいない。

　もう永遠に戻ってくる事は出来ない。

　死とはそういう事なのだ。

　出来上がったバスケットを持って

　これからお友達の家へ行くそうだ。

　　花屋さんに行ってきたって言うわ

　　バスケット作ってもらったって。

　　喜んでくれると思う。

　そう言ってお客様は帰って行きました。

　後ろ姿がなんとなく寂しそうだった。

　輪廻転生。

　あるのか無いのか私にはわからない。

　あの2人が

　再び会うことは出来るのだろうか。

　たぶん今このままで

　再び生を受ける事は出来ない気がする。

　私は

　生きている間しか私ではいられないのだ。

　家に帰ると

　モチくんがそばにやって来た。

　頭を撫でてあげる。

　手にモチくんの体温が伝わる。

　共に生きている。

　共に日々を刻んで行く。

　今だけ

　生きている間にしか出来ない事なのだ。

　2度と

　同じ日々は繰り返されない。