hanakosaanのブログ

猫と暮らす日々を気ままに書いてます。

溶。

こんばんは。hanakoです。

 

 暑いな。

 

 でも私はまだセミの声を聴いていない。

 トンボも2回位しか見ていない。

 

 やっぱり何かおかしい。

 なんだか夏っぽくない夏。

 

 そんな事を考えながら

 水撒きをしていると

 サッちゃんが店にやって来た。

 

  暑いねー。

  体大丈夫?

 

 うん 大丈夫だよ。

 

 

 サッちゃんは中学の同級生。

 店で再会した。

 

 実は私は中学時代サッちゃんにいじめられて

 いた。

 

 

 サッちゃんは目立つ子だった。

 クラスでもリーダー格の子で

 女の子はみんなサッちゃんに従った。

 

 今みたいにイジメなんて言葉が無かった時で

 教師にも全く気づかれはしなかった。

 

 とりあえずサッちゃんに

 

  あの子なんか嫌だね。

 

 そう言われると

 その時からその子はクラスの女の子から

 仲間外れにされた。

 だからみんなサッちゃんのご機嫌取りをした

 

 ある日

 その仲間外れに私がなった。

 

 音大を目指していた私は 

 音楽の先生と仲が良かった。

 

 先生が顧問の筝曲部の部長を掛け持ちしてい

 た私は放課後 

 先生にバイオリンを教えてもらっていた。

 田舎で塾はピアノ位しかない土地なので

 とにかく楽器が弾けるようなりたかった。

 

 それが彼女の目に留まったのだ。

 

  あの子なんか贔屓されてない?

 

 後で聞いたけど

 どうやらそんな事を言ったらしい。

 

 次の日登校してクラスの女の子の雰囲気から

 私は自分がシカトの対象になったのだと気が

 ついた。

 

 

 もともと人付き合いは苦手だし

 全く同世代と噛み合わなかったので

 ひとりでいる方を好んだ。

 

 別に口を利いてもらえないなど

 そもそも休み時間は本ばかり読んでいたから

 かえって話しかけられるのはウザかったし

 下駄箱の靴に画鋲を入れられる程の嫌がらせ

 でもなかった。

 

 だからクラスの女の子全員にシカトされても

 一向に構わなかったのだけれど

 唯一困ったのが

 グループになって行動する事だった。

 

 当然どこのグループにも入れてもらえない。

 

 まぁ 実はそれも別に良かったのだけれど

 担任がやっかいで

 私が集団行動を乱していると責めた。

 

 クラス全員から嫌われるのはあなたに何か

 原因があるのだから思い当たる点は反省して

 改めなさい。

 

 放課後 

 ひとり残され担任に注意された。

 

 家庭訪問の時は

 私がイジメをしていたので逆に今度は

 クラスの全員から嫌われていると母親に

 言ったらしい。

 

 サッちゃんの取り巻きが

 担任に聞かれて言ったのだ。

 

 もちろん嘘もいいところ。

 

 相手が先生のお気に入りのサッちゃんだから

 ね。

 クラスの女の子全員に慕われていると見えて

 いる。

 

 そう思っている先生に私が何を言っても

 理解してくれる訳はない。

 

 そのまま私はクラスの嫌われ者として

 2年間を過ごした。

 

 その間

 サッちゃんはクラスの女王様だった。

 

 

 中学を卒業すると

 高校は違っていたし

 それからサッちゃんと会うことは無かった。

 

 アイドルになる為にオーディションを受けた

 とか

 何やら華々しい風のうわさはあったけれど

 結局サッちゃんが芸能界に入る事は無かった

 

 

 それから月日が流れて

 5年位前にサッちゃんがお店に花を買いに来た

 中学以来の再会だ。

 

  久しぶりだねー。

 

 親しそうに声を掛けてきたサッちゃんは

 ただのオバサンになっていた。

 

 自分を棚に上げる訳ではなくて

 あのサッちゃんが

 あまりに普通のオバサンになっていたのが

 意外すぎたのだ。

 

 アイドルになりたいと

 公言していたサッちゃんが。

 

 聞けば

 短大を出て中学の同級生と結婚して

 2人の子供のお母さんになって

 地元で暮らしていた。

 

 あのひとなら

 東京あたりにいるだろうと思っていたのに。

 

 

 それから時折

 お店に来るサッちゃんと話をした。

 それは親し気に。

 たぶんサッちゃんは 

 中学の頃の事は気がついていなかったのか

 忘れてしまったのか

 全く悪びれなく私と話した。

 

 

  若い人に職場でついて行けない。

 

 そんな弱々しい言葉が

 サッちゃんから出るとは思わなかった。

 

 サッちゃんの口から出る言葉は

 オバサンが抱える老いの悩みだった。

 

 あのサッちゃんがねぇ。

 

 私には意外で仕方が無かった。

 

 

 

 花を買ったサッちゃんが

 レジでいつもの様に話をはじめた。

 

 hanakoちゃんだから話すけど。

 

 サッちゃんが話してくれたのは

 自分の幼い頃の話だった。

 

 3人兄妹の末っ子で

 小学生の時

 歳の離れた兄がバイクの事故で亡くなった。

 

 ひとつ上の姉は

 高校を卒業すると家から居なくなり

 消息不明になった。

 

 短大を卒業したサッちゃんは

 家を継ぐ為に地元に連れ戻された。

 芸能界への夢はそこで終わってしまった。

 

 それから同窓会で再会した同級生と

 結婚したけれど

 どちらも跡継ぎだったので親同士で喧嘩に

 なり 

 結局婿入りで話はまとまったけれど

 義実家とは縁を切られた。

 

 それから実の親の介護をして看取ったのが

 最近。

 

 痴呆の親を子供達に見せたくなくて

 2人の子供を早くに家から独立させた。

 今は旦那さんと2人暮らしだ。

 早くに自分の生活を確立させてしまったから

 か

 子供達はあまり帰って来ないそうだ。

 

  ご飯作るのも2人だとねぇ。

 

 家の近くのファミレスに

 旦那さんと2人でいるのを何度か見かけた。

 

  なんにも楽しいこともないなぁ。

 

 あの光輝いていた女王様のサッちゃんは

 どこに行ったんだよぉ。

 

 友達いないの?

 私が聞くと

 

  私のお兄さんて

  暴走族のリーダーやっててね

  その妹だって恐れられてたから

  親友なんていなかったな。

 

 なるほど

 だからみんなご機嫌取ってた訳だ。 

 

  嫌だったなぁ。

 

 て あんたもかなりそのおかげで

 チヤホヤされてたのに。

 わかってなかったんだな

 自分の一言でえらい迷惑被った子がいた

 事を。

 

 

 

 車に戻る後ろ姿を見ながら思った。

 

 あんたも苦労したんだね。

 

 

 まぁ シカトされた事は忘れないし

 正しくはないけれどね。

 

 

 許してやるよ。

 もうおしまい。

 

 だから

 たまに愚痴こぼしにおいで。