hanakosaanのブログ

猫と暮らす日々を気ままに書いてます。

ごめんよ ブチ男。

こんばんは hanakoです。

 

 ブチ男は少しずつ衰弱して行った。

 

 手術前はなんとか柔らかいパウチ位は

 食べられたのに

 縫合の仕方が悪いのか

 手術後は口が開かなくなってしまった。

 

 田中さんは毎日病院に通い

 抗生物質と栄養剤を注射してもらった。

 

  この薬注射すれば

  普通は効くんだけどな。

 

 抗生物質が全く効かないブチ男に

 先生は首を傾げた。

 

 ブチ男の顎は化膿し始めた。

 

 高齢のブチ男は

 もしかしたら白血病を発症していたかもしれ

 ない。

 

 事故に遭う数日前

 ご飯を食べづらそうなブチ男を病院に連れて

 行き

 抗生物質を注射してもらったのに

 症状は全く改善されなかった。

 

 ??? もしかして。

 

 そう思っていた矢先の事故だった。

 

 連絡が来た時は会いに行けたけれど

 今は田中さんの猫だ。

 私が口を出す訳には行かない。

 

 会いに行くたびに

 ブチ男は痩せて

 とうとう起き上がれなくなった。

 

 安楽死を提案された時もあったらしい。

 しかし

 ブチ男の亡骸を連れて帰れないと

 泣きながら田中さんが言うので

 先生も最後まで付き合う事にした。

 

 ある日

 田中さんがどうしても病院に行けないので

 私に行ってくれないかと連絡が来た。 

 

 ブチ男を病院に連れて行って

 私の家で迎えに行くまで待っていて欲しい。

 

 私はそれを受けて

 ブチ男を病院に連れて行った。

 

  頑張ったよ この子も田中さんも

  もう この子は痛みを感じてないから

  大丈夫だよ。

 

 注射を終えた先生が言った。 

 ブチ男と会うのは

 これが最後だと先生はわかっていたのだろう

 

 先生にお礼を言って

 家に向かった。

 

 

 いつも寝ていた私の毛布に

 ブチ男を寝かせた。

 

 1ヶ月ぶりの我が家だ。

 

 目は開けなかったけれど

 匂いでわかったのだろう

 尻尾をふって

 深くため息をついた。

 そして穏やかな顔で眠りについた。

 

 覚えているかい?

 私が劇団四季のキャッツを観て帰ってきたら

 お前が私の毛布で爆睡していたんだ。

 

 痩せて汚くてボロボロだった。

 ブチ柄のバランスが悪いブサイクさ。

 見た事のない猫に驚いた。

 放っておいたら

 3日間食べて寝てをひたすら繰り返した。

 

 そして

 3日目に何事もなかったかのように

 外へ出ていった。

 

 それからお前は

 うちの近所に住み着いて

 夕方にはうちへご飯を食べに来た。

 

 お前はどこから来たのか

 かなり年は取っていたみたいだから

 捨てられて 彷徨っている時に

 うちを見つけたのかな。

 

 近所の家の車の上

 茂みの中

 時にはうちの猫を苛めて私に怒られた。

 目をつぶって聞いていないふりをしたっけ。

 

 そうだ ブチ男

 家の周りを歩こう。

 

 毛布にブチ男をくるんで外に出た。

 

 ブチ男が縄張りにしていた場所。

 いつもいた街灯の下に行くと

 ブチ男が光に気がついて目を開けて

 小さく鳴いた。

 

 そうだよ ここは

 お前がよくいた街灯の下だよ。

 

 ブチ男は目をキョロキョロさせて

 私が歩く景色を見ていた。

 

 ここのおばちゃんにコロッケ貰ってただろ

 ここで よく雨に濡れていた。

 あちこちに

 ブチ男の思い出があった。

 

 ブチ男が良く見張りをしていた塀の所に

 来ると

 目を見開き

 ニャーと開かない口で精一杯鳴いた。

 

 そうか

 お前は自分の縄張りがずっと気になっていた

 んだね。

 ここへ帰りたかったんだ。

 

 私は

 ブチ男を手放すべきじゃなかったんだ。

 

 たとえ 命が短くなっても

 ブチ男はここに帰りたかったんだ。

 

 私は

 それを受け止めるべきだったんだ。

 

 私はブチ男の事を

 何も考えてやれなかった。

 

 ごめんよ ブチ男。

 

 猫がこんなに思いを持った動物だったなんて

 もっと早く気がついていれば。

 

 ごめん ブチ男。

 

 

 

 家に戻り

 テラスにブチ男を寝かせ

 一緒に座って月を見た。

 

 私が仕事から帰って来ると

 このテラスで良く待っていたね。

 

 

 ブチ男の周りに

 いつの間にか

 うちに来ている猫達が集まってきた。

 

 ただ周りに座って

 月の光にみんなで照らされた。

 

 私に抱かれたブチ男は

 静かな寝息をたてていた。

 

 

 明け方

 ブチ男は虹の橋に出発した。

 

 

 ごめんよ

 私は力が無くて

 結局

 こんな形でお前を見送る事になってしまった

 

 それだけが

 悔やまれてならない。

 

 

 あの塀を見るたびに

 探してしまう。

 

 あれ?ブチ男は?

 

 もう

 お前はいないんだ。

 

        続く。